保育士の給与水準は大幅に上昇その1(きっかけ)
見直された保育士の過酷な労働環境
1、保育士の給料が大幅増
(一般企業と比べて劣っていた賃金形態)
保育士不足が深刻化するにあたり、ようやくメディアなどで保育業界における保育士の給与水準が一般企業と比較するとかなり下回っていることが注目される。
正確には保育士の多くが結婚退職等を理由に30代前に退職してしまうことが多かったので『20代女性の平均年収』でしか比較されなかったから、一般企業とそれほど大きな差がみられなかっただけであり、実際に定年退職までを考えると一般企業とはあまりに大きな開きがあったのだ。
では、どうして保育士の年収は頭打ち状態になるのか。
それは国や自治体から入ってくる補助金は一定であり、職員の昇給まで考えていなかったのも当時の要因であった。
2、園長や主任といった役職への昇進
(保育士は役職で賃金があがる基本システム)
2000年の保育制度改革前・・・
民間、、、いわゆる私立保育園は社会福祉法人を中心とした一族経営の独占状態の為、理事長ならびに園長・副園長といったポストが経営者一族で占められていたので、一般の保育士は”出世”が出来なかったのだ。
その為、勤続を重ねても主任までが現実的につけるポジションで、昇進が一般保育士はなかなかできなかった。それでも役職に伴う昇給が出来ないため、毎年2000円程度の昇給しか望めない。
となれば。。。年収だけでなく『管理職を目指したい』という勤労意欲もわかなければ、結婚を機に退職したり、他業種への転身も当然考えるわけである。
3、労働環境の見直し
どの業界も同じだが、、、雇用側に有利な場合、労働者に対して厳しい労働条件を押し付ける傾向がある。
本来、保育士の業務というのは、普段の保育だけでなく
『書類(日誌、指導案など)』
『準備(製作、ピアノ、行事など)』
『環境(清掃、部屋の装飾など)』
これらの業務も日々の保育と並行してすべて行わなければいけない。それを幼児であれば一人担任でこなすのは至難の業。
というか・・・そんなの勤務時間内に終わるはずがない。
そうなると残業が発生するのだが、、、この残業代というのが一昔前は支払われていない保育園の方が多かった。
建前上は・・・勤務時間が終わったらすぐ退勤しなさい。
でもそれは保育園に残ってはいけないだけで、結局家で仕事を持ち帰るということ。
これでは保育士さんは辞めたくなってしまう。
この部分の改善も、この10年で大幅に見直されることになっていくのである。
保育士の求人バブル
新聞やNEWSなどで保育士不足がよく取り上げられるようになったが、この現象はこの10年間で急激に起きたこと。
(・・・と言ってもこれは都市部に言えることで地方はまだまだ保育士の求人は豊富ではないらしい)
それまでは保育士の求人は学校とハローワークのみで、このような有料の求人サイトや保育士専門の求人サイトはなかった。
もちろん保育士派遣なんてこともほとんどなかった。
実際に自分も学生時代から人を動かす仕事がしたいと思い、大手の人材会社に入社したが、、、保育士部門が存在していて、現在はその需要がとても高いというのも入社してから知った。
ではこの保育士求人バブルは何がきっかけで起きたのか。
それは色々と教えてくださった恩師でもある改めて『小林大介さん』の項目で説明しようと思うが・・・
一言でいえば
1、東京を中心とした子育て世帯の都市部への人口流入。
2、女性の社会進出と長引く不況による共働き世帯の増加。
3、保育園への需要拡大。(待機児問題)
4、保育士制度改革による保育所の増加。
5、保育所の増加だけが進行してしまい、肝心の人材確保を並行してやらなかった。
6、そして・・・保育士だけでなく特に東京はそもそもとして全ての業種において人材不足であるということ。
現在は10年前と比較すると景気も好転しているが、結局保育園の需要は引き続き増加。そして『6』にある都市部の人材不足とぶつかってしまった。
(この点は、拓磨さんとだいすけさんの意見が一致していた。)
個人的には、だいすけさんから教わった『5』の予測されていた問題を先延ばしにした結果についてとても面白いと思っているのですが・・・
(すでに10年前にこの事態を予測して提言していたのだから凄い。。。)
これだけ一気に保育園を新設すれば当然保育士は不足するのが必至。
もともと東京でも、保育士よりも保育士の求人の方が少なかったとは言え、、、それでも適度に就業のバランスが取れていたのだからなんともお粗末。
しかしこの結果、私たちのような民間の人材会社が保育士の求人を取り扱ったり、保育士の派遣や人材紹介を始めるきっかけになったのだから面白い。
では、この保育士求人バブルはいつまで続くのか??
色々な人の話を統括すると社内では・・・あと5年は続くと見られている。
逆を言えば、この5年間の間はまだまだ保育業界は色々な動きがみられるということ。
(一般業界の拓磨さんと、保育業界のだいすけさんとでは微妙に意見が違った点も面白い。)
個人的にはとても興味深いと同時に、保育士さんにとっては、よい意味で処遇改善につながる機会がまだまだ続くのではないでしょうか。